車のエンジンスイッチを起動した際に、「ウィーン」というモーター音が聞こえない時は、燃料ポンプに何かしらの異常が発生している可能性があります。燃料ポンプの作動音が聞こえない場合は、エンジンにも影響が出ている可能性が高く、不動車に成りかねない故障を疑わなくてはいけません。
こちらの記事では、「燃料ポンプ」が故障するとどのような症状が現れるのか、燃料ポンプが故障する原因や自分でできる応急処置の方法など、詳しく解説します。
燃料ポンプが故障するとどうなる?
燃料ポンプが故障すると、前述したようにポンプ作動時のモーター音が聞こなくなる他、様々な症状が車に現れます。こちらでは燃料ポンプの仕組みと合わせて解説します。
燃料ポンプの仕組み
燃料ポンプはフューエルポンプとも言われるガソリンエンジン車には欠かせない部品の一つです。燃料ポンプが燃料タンクからエンジンへ、必要な燃料を供給しています。フューエルとは、原動機エンジンのエネルギー源であるガソリンや軽油等の燃料のことを指します。
燃料ポンプは燃料タンク内に構造装置が置かれているインタンク式と、エンジン付近に設置されているアウトタンク式の二種類があります。インタンク式は燃料タンク内でポンプが動くため、タンク内の燃料によって装置が冷却される仕組みになっており寿命が長いとされています。アウトタンク式の場合はボンネットを開けたところでエンジン付近に置くことが多いため、点検や整備がしやすいとされています。ただ、万が一事故に遭ったときはアウトタンク式はポンプが露出している状態のため受ける影響が大きく、故障もしやすくなっています。
エンジンは回転する仕組みとなっているため、急ブレーキをかけたような減速にはありません。回転慣性力があるため、万が一運転中に燃料ポンプの故障でエンジンがストップした時は、慣性の力が有るうちに路肩などの安全なところへ避けるようにしましょう。
燃料ポンプが故障したときの症状
燃料ポンプが故障してしまうとエンジンに燃料が送られず、例え走行中であってもエンジンは止まってしまいます。また、駐車中に燃料ポンプが故障してしまった場合は、走行を始めようとしてもエンジン自体がかからないため不動車になってしまいます。
燃料ポンプが故障で不調になっている時は、ガソリンを送られて動くエンジンの動きが不安定になります。不安定なエンジンの動きというと、始動がしづらかったり加速が弱いなどといった状況や、ポンプモーターが大きく聞こえるなどです。何度かエンジンの始動を試みて動いたとしても、原因を取り除かないでいるといつ燃料ポンプが原因で車が動かなくなるかわかりません。このような不調が感じられた時は、整備工場などで燃料ポンプ周りの部品点検等を行いましょう。
燃料ポンプが故障・動かなくなる原因は

燃料ポンプが故障して動かなくなる原因は何があるのでしょうか。
配線に不具合がある
燃料ポンプは電子制御で作動しているため、いくつかの配線がつなげられています。しかしその配線が劣化や害獣などに噛まれて断線してしまったり、間違えた配線の繋ぎ方をしてしまったりすると、燃料ポンプに電子制御信号が届かず、エンジンに必要な燃料の供給も止まってしまい不動車になります。
アース線は、車体に搭載されているバッテリーの電力(+)を、燃料ポンプへ電源を供給してするためのライン(-)です。燃料ポンプは電気制御によって必要な燃料をエンジンへ送っていますので、アース不良で制御ができていないまま燃料ポンプが動作し、エンジンへ過剰な燃料を送るとエンジンの故障を招く場合があります。
リレー部品に不具合がある
車のリレー部分とは、バッテリーから電装品(電気を必要とする車載部品)へ電力を運ぶルートの中継地点のことで、継電器とも言われています。リレーでは、電力や電圧を調整したり、通電・遮断するなど、電装品に不要な高電圧が流れて負担を掛けないための仕組みがあります。このリレー部品に不良や不具合が発生していると、電子制御を受けている燃料ポンプも正常に動作ができなくなってしまい故障の可能性があります。
リレー部品に不具合が現れる要因は経年劣化によるものが多くなっていて、一般的なリレー部品の耐久度は10万回使用が耐久程度です。また、電流や電圧が適切な量を超えて過剰に負担がかかった状態が続くと、リレー部品の劣化が早まります。
ECUに不具合がある
車載ECU(Electronic Control Unit) は、車に搭載されているシステムを電子制御する装置の名称です。燃料ポンプは車載ECUが制御しているため、ECUに不具合が出るとポンプが正常に動作できなくなってしまいます。車載ECUは精密コンピュータです。コンピュータは高温多湿に弱いため、夏季の気温が上がり湿度も高い季節は故障が多くなります。
フィルターのつまりが原因
エンジンの燃料タンクにはフィルターが取り付けられています。フューエルフィルター(燃料フィルター)という名称で、燃料に含まれている異物が除去するために必要な部品です。燃料フィルターが異物によって目詰まりすると、必要な燃料がエンジンに送られなくなり、燃料ポンプでもエアと燃料のバランスが崩れてしまい故障につながります。
燃料ポンプの寿命
燃料ポンプの一般的な寿命は走行距離が5万kmから10万kmと言われています。車の利用状況次第で前後はするものの、走行中は動き続けている部品ですので消耗による劣化は避けられません。都市部で車を利用する方は、信号機等での停車・発進が多くなります。このような地域では、アイドリング回数が多くなることにより寿命が短くなると言われています。
アイドリングとは、車のエンジンがかかった状態でアクセルを踏まず、停車している状態のことです。アイドリング状態の車は、低回転でエンジンが回り続けているため、燃料の消費もありながら排ガスも排出しています。
燃料ポンプの故障の疑いがある時の対処法

エンジン始動ができなかったり、走行中に突然エンジンストールが起こった時は、燃料ポンプの故障の疑いがあります。燃料ポンプが故障している可能性がある時は、どのような対処をすればいいのでしょうか。
配線の点検をする
燃料ポンプは電力で動く装置ですので、電圧が適切に供給されている配線となっているのか確認します。配線が断線していたり、接触不良になっていることが要因で必要な電力が燃料ポンプに届いていない可能性があります。また、必要な電圧は出ていても、配線の中継地点であるリレー部品に不良があると、電圧の調整が上手くいかずポンプに悪影響を及ぼすこともあります。配線の点検や修理については、整備工場やディーラーなど専門業者に依頼しましょう。
部品周りの点検をする
燃料ポンプに故障の疑いがある場合、燃料ポンプ内の燃料を送るインペラの破損や、電気を発生させるモーターの劣化が原因の可能性があります。また、内部シールやベアリング部分も経年劣化があります。整備工場等に依頼して、部品点検・交換が必要か確認しましょう。
燃料ポンプ故障時の応急処置方法
走行中にエンジンストールしてしまい、燃料ポンプの故障が疑われる時は、できるだけ安全なところまで車を移動させてから、レッカー車等の救援依頼をしたいと考える方が多いでしょう。
エンジンがかかりづらい、燃料ポンプの作動音が聞こえないといった症状が出ている時は、燃料タンクの周辺を軽く叩くといった方法や、エンジンのオン・オフ切り替えを数回繰り返すといった応急処置を取ることでエンジンがかかることがあります。もしこの応急処置を取りエンジンがかかった場合は、まず安全な路肩まで車を寄せて後続車や対向車の交通に影響がでないところへ移動をしてから、レッカー等の救援依頼をしましょう。応急処置はあくまでも緊急時向けですので、例え応急処置によってエンジンが動いても、整備工場での点検は必ず受けましょう。

まとめ
こちらの記事では、燃料ポンプ故障の疑いがある時の原因や、対処方法について解説しました。燃料ポンプが故障してしまうと燃料の供給を受けられずエンジンがかからなくなり、不動車となってしまいます。駐車場内での故障であれば他車に迷惑をかけることはあまりありませんが、道路走行中にエンジンストールが起こると危険です。燃料フィルターのつまりがないか、配線の断線はないかなどは定期点検で確認をしてもらうことが可能な部分ですので、エンジンの不調を感じた時は早めに点検を依頼するようにしましょう。